今回は、町内会税務について考えてみます。 とはいっても、法人税や住民税といったことではなく、町内会館等の集会施設について検討することにします。町内会は、その区域の住民による「地縁」に基づいて形成された団体であり、「地縁団体」といいます。
地縁団体について その1(平成3年の地方自治法改正前)
以前においては、町内会や自治会は、民法に定める「権利能力なき社団」と位置付けられ、法人格は認められていなかったため、会館の建物や敷地については、団体として登記できず、個人の名義にならざるを得ませんでした。
そして、その個人の名義人に相続が発生した場合には、相続人との間で問題が発生することも少なくなかったのです。
地縁団体について その2(平成3年の地方自治法改正後)
それまでの問題の発生を解消するため、不動産の保有又は保有を予定している団体については、一定の要件を満たす場合には、市町村長の認可により「法人格」を得て、不動産の登記ができることになりました。この認可を得た団体を「認可地縁団体」といいます。
地縁団体について その3(地主が不動産を寄附した場合の課税)
地方自治法の改正によって、問題が全て解決した訳ではありませんでした。町内会館や自治会館は、その地区の地主や有力者の好意によって、敷地を無償で使用させてもらっている場合が多いのです。その場合に、使用させている地主や有力者は、自分の生前中にその土地を当該地縁団体に寄附しようと考える訳です。 そこで、税務上の大きな問題が発生することになりました。
個人が善意で法人に土地等を寄附すると 時価で譲渡したものとして課税
これは、所得税法59条に規定されている制度で、個人が法人に対して「譲渡所得の起因となる資産の移転」があった場合に、対価が時価の1/2に満たない価格であった場合は、時価で譲渡したものとみなして、譲渡所得税が課税されるという制度です。いわゆる「みなし譲渡」というものです。
このみなし譲渡には、対価がゼロである寄附も当然含まれることになります。
善意で町内会に土地を使用させてあげていたことだけでも徳分が高いのに、無償で寄附したら時価で売ったとみなして、寄附した人に課税されるのでは、地主はたまったものではありません。
国等に財産を寄附した場合の例外
ここで、このみなし譲渡の課税を免れる制度があるので説明します。それは、国・地方団体・公益法人等に財産を寄附した場合、譲渡所得が非課税となるものです。この制度は、租税特別措置法第40条に規定されていることから、国税では、この制度を通称「40条」と呼んでいるもので、審理担当が従事します。
公益法人等が適用を受けるためには、国税庁長官の承認を必要とする大仕掛けなもので、承認申請をすると、税務署を窓口として厳密な審査がなされます。
認可地縁団体への財産の寄附が非課税に ならず課税に!!(平成20年11月末日以前)
地主が町内会に寄附した土地の譲渡所得が非課税となるかということについて、この小見出しのとおり、平成20年11月末日までは、当然に該当しないものとしておりました。
「40条」に該当する公益法人とは、特定の地域等に限定した者にのみ対象とするのではないとされていて、「地方自治法に規定する「地縁による団体」その他もっぱらその構成員等の利益を図ることを目的とする法人は、公益法人に該当しない。」と通達で規定されていたのです。私が税務相談室に従事していたときにも、何度も相談を受けてきました。
認可地縁団体への財産の寄附が非課税に!!(平成20年12月1日以降)
それが、この小見出しのとおりとなった訳です。(通達改正) 法律というのは、いったん制定されると、その文言に縛られ、本来の目的・趣旨から離れた運用がなされる場合があり、これはその典型のように思います。
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